Medical Volunteer Report from Dr Takahashi

4月11日
大槌町便り -Report from Otsuchi town, Iwate, japan-

ウイスコンシン医科大学の高橋徳です。3週間の岩手県大槌町の医療救援を終え、帰米します。
以下に、活動の概略をレポートします。

1 医療支援
津波で多くの人々が流され、家屋内や自動車内に取り残された人々も、津波と火災により、亡くなっています。その結果、死因は、溺死と焼死がほとんどです。大規模な地震で大きな揺れでしたが、この揺れは『横揺れ』ではなく、『縦揺れ』であったため、津波や火災から免れた建物は、老朽化した家々でも、健全に残っていました。神戸の震災の際には、瓦礫の下敷きになった患者の『クラッシュシンドローム』が、 問題となりましたが、今回は、この種の患者は皆無に近い状態です。今回の災害の特性として、『生』と『死』の両極しか存在せず、その中間の重傷疾患(外傷、感染)の患者はごく稀でした。
災害発生後、多くの医療救援チーム(DMAT, JMAT)が、全国各地の大学や医師会から派遣され、各地の避難所を拠点にして、医療行為を行ってきました。毎夜、釜石市の災害センター本部に、これらのチームの代表が集まり、その活動範囲や、治療内容の報告会をおこない、後続チームへの引き継ぎを含め、翌日の活動方針を検討してきました。ただ、前述のごとく、重傷疾患(外傷、感染)がごく稀だったため、 これらのチームの主な診療対象は、難を逃れた避難民となり、慢性疾患(高血圧、腰痛、関節炎、糖尿病)、花粉症、感冒などへの対処が、その大半を占めていました。極論すれば、『災害医療団』が『老人医療』に従事することになりました。
多くの医療救援チームの参画により、 現地の医療は飽和傾向となりました。皮肉なことに、慢性の医師不足から、突然、急性の医師過剰状態となった地域もありました。

2 今回の災害の特殊性
大槌町には、基幹病院としての大槌病院(120床)と5つの開業医院が存在していましたが、その全てが被災し、機能不全となっていました。そして医師や、看護士の多くが避難民となっています。
災害発生後、一部の地域を除いて、携帯電話が繫らなりました。その際には、通信手段は、『口コミ』でせざるをえませんでした。インターネット網は、現在も機能していません。
ガソリン不足による、医療救援チームの機動性の低下も大きな問題でした。このガソリン不足が避難所に開設されている診療施設への通院をも困難にしていました。ガソリン不足が『口コミ』の通信方法にもおおきな足かせとなっていました。

3 地域医療 の復興
医療機関が全滅した大槌町の医療体制をいかに復興させるかは、重要な懸案事項です。 大槌病院のスタッフが再び集まり、4月20日より、被災を免れた神社の境内に仮設診療所を開くことになりました。二人の開業医の先生も、それぞれ来週より、仮設診療所を開きます。これらの診療はすべて保険診療となりますので、現地医療のサポートの意味からも、今まで医療救援チームが行っていた無償の診療体系は徐々に解消の方向となるでしょう。
私は岡山に本部をもつAMDA (http://amda.or.jp)を活動母体にしていましたが、AMDAの緊急医療チームも 4月下旬までには、その当初の任務を終える方向です。

4 今後の医療ケアの問題点
今後の医療ケアは Post-traumatic stress disorder (PTSD)や感染症の予防が、主要な対応課題となるでしょう。長期間の避難所生活による廃用制運動障害の発生も懸念されます。これらの疾患に対処し得る専門家チームの、息の長い現地派遣が望まれます。 AMDAも、中長期的な視野から、大槌町の医療システムの再構築への支援策を検討しています。

5 復興への息吹き
日本全国から、やむにやまれぬ気持ちから、ヴォランテイアに駆けつけた、多くの人々に出会いました。そして、被災者にそれぞれの表現で暖かいメッセージを送っていました。生物には、自己保存の本能があると同時に、他者と協調しようとする本能も存在します。残念ながら、我々人類は、この本能の存在を忘れつつありました。
この震災を契機に『我欲』に走りがちであった日本人が、他人への『いたわり』に目覚めたことの意義は大きいと思います。そして、この慈しみという本能が日本人に存在するかぎり、東北の復興、日本の復興は、必ずや達成可能でしょう。 復興までには、10年あるいは20年という長い年月がかかるであろうと言われています。どうか、末長く、慈しみの心を東北に向けてください。

Toku Takahashi
Professor
Dept. of Surgery
Medical College of Wisconsin
http://www.mcw.edu/display/docid25272/TakahashiStudy.htm

高台から眺める全滅の町

行けども、行けども、瓦礫の山

インターネットで世界中に流れた衝撃の光景

ゴーストタウンに舞う雪

AMDAの緊急医療チーム

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